会社に入ったばかりの新入社員の皆さんは、「バリバリ働いて、認められて、どんどん出世したい」と考えている方も多いかもしれません。しかし、ポストには限りがあり、次第に出世できる人/できない人の差がついていきます。上の役職ほどポストの数は減っていくので、入社当時に描いていたような会社員人生を送れる人はほんの一握りという厳しい現実があります。
しかし、出世しない人生は不幸なのでしょうか?私はそうは思いません。この記事では、出世と承認欲求と幸福感の関係についてまとめます。
日本の会社で出世するには?
日本企業は大半がメンバーシップ型雇用であり、一度、会社に入ったら定年まで同じ会社で働き続けることを前提にした雇用形態となっています。長期的に色々な部署を異動する前提で人事制度が作られているため、個人のスキルだけでなく社歴、年齢なども処遇に大きく影響してきます。また、組織の中で円満に効率よく仕事を進めるためのリーダーシップ・協調性も重視されます。
出世するためには上記観点を意識して高い評価を得られるよう行動するわけですが、それを評価者にアピールすることが大切になってきます。いやらしい言い方をすれば、日本型の企業の場合、「いかに上司・人事に気に入られるよう行動するか」がとても大事になります。最近では、360度評価を行ない、同僚や部下の評価を加味しているところもあるみたいですが、どんなにスキルが高くても上司に嫌われてしまってはお終いです。
まとめると、上司に「自分がリーダーシップ・協調性能力が高いことをアピールする」のが出世する上での必須条件の一つとなります。だから、仕事以外の時間帯で、例えば飲み会とかゴルフとかで、上司と時間を共有することは効果があるわけです。協調性をアピールできるので。
「えっ、ちょっと待って。普通は“仕事の成果“や”スキルの高さ“で評価されるのではないの?」と思う方もいるかもしれません。しかしながら、営業職やトレーダーのように成果が数字になって客観的に評価できるならよいのですが、そうでない仕事も世の中にはたくさんあります。例えば、システム開発の仕事は、ほとんど場合「チーム」で活動しますので、あなたがどれほど仕事ができるかプロジェクトの成功に貢献したかを定量的に把握することは簡単ではありません。
承認欲求を満たすためには?
職人気質の性格が強い人だったり、上司との相性が悪いケースでは、残念ながら、どんなにスキルが高くでも日本企業で出世するのは難しいと思います。でも、ここで一度、立ち止まって考えてみて下さい。そもそも、あなたはなぜそんなに出世したいと思うのでしょうか?
その背景には、承認欲求があるはずです。ここでいう承認欲求はマズローの5段階欲求の承認欲求を指しています。
出世という形で会社の中で承認欲求を満たせないのであれば、会社の外に目を向けてみて下さい。そもそも人生100年と言われている現代では、定年退職で会社を辞めた後も人生はしばらく続きます。早い段階で会社以外で承認欲求を満たせる場を持つことは、人生を豊かにする上で大きな意味があります。
会社以外で承認欲求を満たすには、同じ趣味を持つ人のコミュニティに参加したり、専門スキル・特技をネットで発信したり、とやり方は色々ありますが、「誰かと共感できている/誰かの役に立っている」と感じることができればよいわけです。
幸福感を満たすためには?
私の持論になりますが、幸福感を満たすにはマズローの5段階欲求において高次元の欲求を多く満たすことが必要と思います。
また、幸福度と収入はある程度までは比例関係にありますが、年収7万5,000米ドル(約800万円)以上になると幸福度はそれほど上がらないということが、ノーベル経済学賞受賞の心理学者ダニエル・カーネマン教授らによって発表されています。
お金がいくらあっても「幸せ」が増えないのであれば、あえて出世せず、仕事のストレスが少ない労働環境に身を置く考え方も有力だと思います。
システム会社で出世すると・・・
普通のシステム会社は出世すると、最終的にプロジェクトマネージャーになるケースが多いです。そして、プロジェクトマネージャーの経験を増やすにつれ、より大規模の開発、難易度の高い開発を任させるようになります。役職の観点だと、下っ端のプロジェクトマネージャーで課長・係長くらい、上位のプロジェクトマネージャーで部長職くらいですかね。
更に出世すると役員として会社経営を担うことになりますが、そこまで出世できる人はほんの一握り。かなり頑張っている人でも、プロジェクトマネージャーまでで出世が止まるパターンが多いのではないでしょうか。
このプロジェクトマネージャーという立場はとてもやりがいがある一方で、仕事の難易度がとても高いです。たまに「どうやっても無理!」という無理ゲーな案件もあります。 従って、何も考えずに「とりあえず出世してプロジェクトマネージャーになりたい」という発想は、必ずしも幸せになれるとは限りません。
高難易度の開発プロジェクトが生まれる背景
システム開発は、ユーザーと合意した開発範囲において品質・予算・納期のバランスをうまくとって進めていく必要があります。PMBOKの基本的な考え方ですね。ところが現実世界は「金がねーんだよ!」「今年のリリースは必須だから!!」とユーザーが無茶振りしてくることも多く、ビジネス上の都合で難しいとはわかっていても仕事を受けざるを得ないケースがしばしばあります。こうなると、上記の品質・予算・納期のバランスが崩れ、プロジェクトの難易度が一気に上がります。
逆の言い方をすれば、開発範囲に妥当な品質・予算・納期が確保できれば、(あと付け足すと「人(開発メンバー・ユーザー)」もすごく大事ですけど、)プロジェクトの難易度は下がります。従って、プロジェクトマネージャーの最も大事な仕事は、最初に、妥当な品質・予算・納期・人を確保する「交渉力」ということになります。
ただ、これってそれほど簡単じゃないです。ほとんどのケースで、自分より偉い人たち、権限を持っている人たちとの交渉になるので。
他にも技術的な問題が出た時に、優秀なSEが開発メンバーにいないために自ら対応したりとか、要員調達に失敗して開発メンバーに恵まれない等の複合要因が重なると、ほぼ完全に死亡フラグが立ちます。
まとめ
日本企業では、上司に従順で、コミュ力があり、協調性の高い人材が出世しやすいのではないでしょうか。頭の良い体育会系の方に多いタイプで、SE業界では、それほど多くないタイプな気もしますが。。。
言い換えると、出世するには、上司と良好な人間関係が築けているか、協調性があり周囲を不快にさせない能力に長けているか、といった波風立てず空気を読む能力が重視されます。例外として、上司が実力派の人の場合は、上司に真に実力を見極める能力があるので、あなたの実力を正しく評価してもらえるでしょう。
逆に、あなたが出世コースに乗っていて会社の評価が高かったとしても、組織の外で、経営者やフリーランスとして活躍できるかは全く違う話だということです。
当たり前ですが、仕事の内容が変わると、出来不出来が大きく変わることも多いです。もし、あなたがあまり異動をせず長く同じ仕事ばかりしていれば、よくできるのは当たり前です。社内では、特定の人と長く関わるケースが多いので、人間関係の相性の良し悪しも大きいです。
結局、今の仕事ができない、評価が低いからといって、それがあなたの絶対的な評価ではないと言うことです。逆に、今の仕事ができていて評価が高いと調子に乗っていると、環境が変わった時に痛い目をみることもあります。
会社の評価に一喜一憂せず、会社以外の居場所を作ることが幸福な人生を送る上で大切なことだと思います。